第1回精神医学懇話会 主題報告
精神医学と神経医学
三浦 岱栄
1
1慶応義塾大学神経科
pp.5-11
発行日 1965年1月15日
Published Date 1965/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200780
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はじめに
精神医学と神経医学との関係は,欧米先進国にあつてはかねてから相当重要な話題であり,たびたびすでに論ぜられていたにもかかわらず,わが国では真剣にとりあげられたことはほとんどなかつたように思う。それは,従来は精神医学と神経学の両者を包含する"神経学会"あるいは"精神神経学会"がこの種の専門学会としてはわが国に存在していた唯一のものであつたからであり,また雑誌も一つの"神経誌""精神神経誌"しか比較的最近まで存在していなかつたからである。またわが国では従来精神医学も神経医学もどちらかといえば日の当たらない特殊中の特殊学科と一般に考えられていたという事情も,この両者を一つに結びつけて会合をもつことに大した疑問を起こさせなかつた理由の一つであろう。
しかるに最近事情は一変した。まず臨床神経学会が独立してその機関紙ももつようになり,ついでこれは"日本神経学会"という完全に独立した学会となつた。精神神経学会と粒神神経誌はいぜんとしてつづいているが,そのほかに"精神医学"という雑誌も生まれた。これらの動きは精神医学と神経医学を遠心的に分離させる方向に進みつつあるように思われる。したがつてこのさい精神医学と神経医学の関係を徹底的に明らかにしておくことが緊急の課題であるように思われ,この精神医学懇話会でも,この問題を真先にとりあげたしだいである。
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