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周知のごとく第3回世界精神医学会は本年6月4日から10日にわたつてカナダのモントリオルで,Cameron教授をChairmanとして開催され,空前の大盛況裡に終幕したが,世界各国(62ヵ国?)から参加するもの3,000名以上,まさにマンモス学会の名に恥じぬもので,わが国からも秋元,諏訪,金子,塩崎,黒丸,黒沢,広瀬,小生ら各教授のほかに数名参加,これにアメリカから駈け参じたものを加えると15名以上という豪勢さで,これまた空前のことではなかつただろうか。(今年7月パリで開催される国際耳鼻咽喉科学会にはわが国から40名以上が参加すると噂されていたが)。先年物故したフランスの高名な社会評論家André Siegfriedは,20世紀の特徴的な様相の一つとして,「大遊覧時代」という章を設けて説明しているが,まさに彼の先見を地でゆく思いがしたのは,あえて私1人ではなかろう。閉会式直前の事務会議で(各国代表者からなる),事務局長のEyがこのつぎの学会には6,000人から集まるのではないかと頭をかかえるようにしてふともらしたが,こうなつてくると喜んでよいのか悲しんでよいのかちよつと見当がつかなくなることはうけあいだ。
さて学会の印象記事であるが,このようなマンモス学会になると,何しろ毎日10も20も同時刻に各部門のセッションがあるので,1人で全部を語るなどということは最初から不可能であり,またナンセンスでもある。したがつて同じくわが国から出席した人たちの間でも10人10色の印象記が書かれるのではないかと思う。私は学会終了と同時に,アメリカにも立ち寄ることなく,大急ぎで帰つてきたので,ホットニュースを伝えるという点では確かに適任であるが(ほかに誰もいないのだから),その私の印象たるやはなはだかたよつたものであることも,これまた確かで,もつともよいのは,秋ごろまでには本学会に出席されたお方々も大部分帰国されるであろうから,その暁に一同で座談会でも開いて語りあつたら,だいたい公正な記事になるのではないかと思い,今から提案しておくしだいである。
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