Japanese
English
研究と報告
各種抗酒剤の抗酒効果に関する臨床的研究
Comparative Clinical Study on the Effect of Anti-Alcoholic Drugs
挾間 秀文
1
,
梅末 正雄
1
,
向井 彬
1
,
一木 子和
1
,
出田 哲也
1
H. Hazama
1
,
M. Umesue
1
,
A. Mukai
1
,
S. Ichiki
1
,
T. Ideta
1
1九州大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiat., School of Med.
pp.348-360
発行日 1964年5月15日
Published Date 1964/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200700
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I.はじめに
アルコール中毒の医学的な治療法には,広い意味での精神療法と薬物療法があると思うが,ここでは薬物療法を行なうさいに用いられる抗酒剤について,その臨床的な問題点を検討した。
1948年E. Jacobsen & J. Hald1)がDisulfiramを発表して以来,催吐剤を用いるそれ以前の療法に比べて,アルコール代謝を直接阻害することによる,より合理的なアルコール中毒の断酒療法が行なわれるようになつた。これについで,同じような原理による石灰窒素(Calcium Cyanamide)をもつてする治療法が提唱されるようになつたが2)〜6),これらはいずれも抗酒剤-アルコール反応を利用した条件反射的療法であるため,抗酒剤服用後のアルコール反応がむしろ過激であることが期待された。したがつて,これらの研究においては,もつぱら厭酒効果という点から抗酒剤のevaluationがなされてきた。これに対して向笠7)8)は,Cyanamideの使用にあたり,「飲酒嗜癖を含む慢性アルコール中毒者たちを酒ぐせのよい危険量以下の節酒に導びく」いわゆる「節酒療法」を提唱し,抗酒剤の新しい使いかたを発表した。そして,この節酒の可能性としてCyanamideの抗酒効果が,アルコール代謝に対しDisulfiramとは異なる阻害作用をもつためであると説明している。
そこで,われわれは従来抗酒剤として用いられてきたものについて,その抗酒剤-アルコール反応に差異があるか否かを客観的に評価し,抗酒剤の臨床的応用についてあらためて検討する目的のために,つぎのような臨床実験を行なつた。
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