Japanese
English
研究と報告
心因性チック症の臨床的研究
A clinical study of psychogenic tic
奥田 裕洪
1
,
大原 健士郎
1
,
石井 晶子
1
Y. OKUDA
1
,
K. OHARA
1
,
M. ISHII
1
1東京慈恵会医科大学神経科
1Dept. of Neuro-Psychiatry, School of Medicine, Jikei University
pp.89-93
発行日 1960年2月15日
Published Date 1960/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200186
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Ⅰ.緒言
器質的変化とくに線状体障害に基くチックとならんで,心因性動機によつて起るチック症もかなり古くから注目されていた。その症状の表現は単純ではあるが,かなり特徴的であり,日常の診療に遭遇することも決してまれではない。このチック症自体はそれほど予後不良のものではなく,症状の発現が全身におよんだりまた過度のKoprolalieが頻繁に認められる症例をのぞけば,とかく放置されがちの傾向にある。そしてこの疾患の大部分が小児期に発症する関係上,症状のために起る強いKonfliktも少く,数回の治療のあと自然の経過にまかせられてしまう場合が少くない。しかしこのような推移は症状の軽重,Konfliktの多少によるばかりでなく,適切な治療法がいまもつてないということが大きな原因となつていると考えられる。またチック症の発生機序が解明されてないためである。発生機序に関して,心因説も力動的立場から論及されたものが非常に多く,自我因子,環境因子,素質的因子の相互作用によつて規定されるという一般論が常識的に考えられている。
われわれは今回,治療後数年の経過をたどつた症例について,ふたたび患者の人格,家庭環境,同胞間の対人関係等を調査し,養育者と患者との力動的関係をさぐり,本症の推移をあわせて検討したいと考える。
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