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はじめに
2013年に改正された精神保健福祉法の第41条には,「厚生労働大臣は,精神障害者の障害の特性その他の心身の状態に応じた良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針を定めなければならない」と記されており,その指針の内容は「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会」(以下,「指針等に関する検討会」とする)での検討を経て,2014年3月7日に「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」(以下,「指針」とする)して公表された。
「指針」の前文には「入院医療中心の精神医療から精神障害者の地域生活を支えるための精神医療への改革の実現に向け精神障害者に対する保健・医療・福祉に携わる全ての関係者(国,地方公共団体,精神障害者本人及びその家族,医療機関,保健医療サービス及び福祉サービスの従事者その他の精神障害者を支援する者をいう)が目指すべき方向性を定める」と記されており,この「指針」の目的が,現在のわが国における入院医療中心の精神医療からの転換を目指したものであることが明記されている。
欧米の大部分の国は,精神医療における脱施設化を20世紀のうちに終了しているのに反し,わが国においては依然として長期入院中心の精神医療が続いていることは誰もが認める現実であり,こうした入院中心の精神医療システムを欧米型の地域精神医療を中心としたシステムに転換していくことの必要性は,2004年の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」ですでに打ち出されている。しかし,私自身は「精神保健医療福祉の改革ビジョン」のもとになった「精神病床等に関する検討会」,その5年後の見直しのための「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」,そして今回の「指針等に関する検討会」に参加し,この間一貫して第一線の精神科臨床に携わっているが,10年経過しても「精神障害者の地域生活を支えるための精神医療への改革」の気配を全く感ずることはできない。筆者に与えられた仮のテーマは「精神保健福祉法41条に関する指針と県での事業化」であったが,わが国においては何故に精神保健福祉法の第41条の意図する「精神保健医療福祉の改革」が進まないのか,改革を進めるためには何が必要かという趣旨でこの文章を書き進めたい。
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