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2009年11月,都立松沢病院創立130周年記念祝賀会で,当時の岡崎祐士院長の呼びかけに集った精神科七者懇談会(精神神経学会,精神科病院協会,精神科診療所協会,精神医学講座担当者会議,自治体病院協議会,総合病院精神医学会,国立精神医療施設長会議)の代表メンバーにより「七者懇松沢宣言」がまとめられた。この共同宣言は,がん,循環器疾患とともに精神疾患がわが国の三大疾病であるにも関わらず,医療法で定める医療計画を作成すべき4疾病に精神疾患が含まれていないことを指摘し,わが国の医療政策の中心に据えるように求めるとともに,がん対策基本法にならって精神疾患対策基本法(仮称)の制定の必要性を訴えた。筆者は2008年1月に対策基本法の制定を目指すべきであることを提言していたので1),七者懇がこの宣言をまとめた意義はきわめて大きいと考えていたが,その後,紆余曲折があって対策基本法の制定作業は頓挫し,精神医療界からの精神科医療改革の推進力が鈍ってしまったことははなはだ残念であった。
ところが,2012年3月の厚生労働大臣告示で,医療法で定める医療計画を作成すべき疾患としてがん,脳卒中,心筋梗塞,糖尿病の4疾病に加えて,精神疾患を加えた5疾病とするわが国の医療施策の方針が明確化された。2002年12月に可決された医療観察法の附則には一般精神医療の質の向上を図ることが明記されており,2004年に精神保健医療福祉の改革グランドデザインが策定され,「入院医療中心から地域医療福祉中心へ」の転換の流れが示されていたが,この医療法に基づく医療計画は病床規制が基本にあるので,この改革の流れに沿ったものと考えられ,感慨深いものがあった。本誌は各都道府県での医療計画作成の取り組みに少しでも役立てようと特集,「医療法に基づく精神疾患の地域医療計画策定」を企画し,筆者も小論を発表した2)。しかし,各都道府県は各地域の医師会と協議して厚生労働省医政局指導課の指針に沿った医療計画を作成したものの,それらが画期的な事業展開となったという報告は寡聞にして聞かない。ところで,病床数規制という点では成果を挙げている例もある。大学病院にしか総合病院の精神病床がない県が全国に5つもあり,筆者の地元もその1つであるが,精神病床が約800床オーバーのため,総合病院に精神病床を新設することが長年できなかった。この医療計画策定が千載一隅の機会であるので,県精神保健福祉審議会で精神科医療計画を作成するにあたって,総合病院に精神病床を設置し,精神疾患患者の身体合併症医療を充実させる医療計画をまとめて知事に意見具申した。その後,県と地元の赤十字病院の努力と,厚生労働省との協議の結果,精神病床の増床の承認が得られて,改築にあわせて22床が新設されることになった。
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