特集 住民の健康に責任をもつ自治体
公衆衛生と保健所の行方
西 正美
1
1石川県
pp.451-456
発行日 1987年6月10日
Published Date 1987/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207334
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病苦からの解放は万人の希求である。人間の歴史の一面は,病苦との戦いの歴史でもある。病苦は,すぐれて個人的でありながら,歴史の中でも社会的現象として記載され,また社会的課題として登場してくる。幾多の伝染病が町や村を襲い,これを壊滅させた。飢饅のような食物の量的欠如による健康破綻や餓死に加え,食物の質的欠陥による病苦も村を滅ぼした。これらの社会的課題との取り組みが公衆衛生の歴史でもある。
現代の公衆衛生の歴史的課題への的確な判断と対応が今日ほど強く望まれたことは,かつてなかったのではなかろうか。いつの時代でも,その時代の今日的課題の選択は重要であるが,多くはなんらの迷いもなく選択できる社会背景や素地をもっていた。つまり,社会的な価値観が比較的均質であった。一方,現代社会は物的な豊かさを背景に,さまざまな価値体系が醸成され,その多様な価値観ゆえに公衆衛生の課題の選択も多様化することになろう。それゆえにこそ,現代の歴史的課題の選択を迫られているのである。
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