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はじめに
精神障害のある人の就労支援が注目されるようになったのは,福祉領域では2006年施行の「障害者自立支援法」からであり,一方労働領域では,2002年「障害者雇用促進法」の改正で,第2条(用語の定義)一の障害者,および六に,精神障害のある人も対象として明文化され,2005年の同法律改正では精神障害者保健福祉手帳を所持している者に限り法定雇用率の算定対象に加えられてからである。厚生省と労働省の統合化で福祉と労働の歩み寄りが急速に始まり,福祉領域の支援者が精神障害のある人の働きたいという欲求を積極的に支援するようになってきた。厚生労働省は就労支援の対象者が多様化するのを受け,障害のある人の一般就労に向けた取り組みを支援する者の人材育成のあり方を報告書にまとめている6)。それによると第1号および第2号ジョブコーチ,障害者就業・生活支援センターの就業支援担当者(主任・その他の職員・初任者),移行支援事業所の就労支援員に専門的な知識や支援技術プログラムを作成した。しかしながら,障害のある人の就労を支援する者は必ずしも専門家とは限らない。むしろ障害者が働く現場や訓練の場に居合せた者の誰もが支援できることが重要だとして,報告書には基本的な対人スキル(自己覚知・相談スキル・コミュニケーションスキル)の習得を挙げている。少数の専門家より多くのナチュラルサポーターの出現が障害者雇用では必要不可欠なことで,障害者が持っている能力を引き出し,高めていくための職場環境調整が必要であると確認されたのである。同時に,支援機関に登録している障害者を企業に送り出す支援者には,職場開拓や体験実習の場を確保するために企業と対等に話し合うことが要求されるようになってきている。支援者が職場環境を理解し,働くその場所で障害者に直接指導を行うことで社員に対してもモデルとなり,共生社会の実現に寄与することになる。
上記の報告書で示されている基本的な対人スキルは,障害の有無に関係なく,人と人がかかわる職場には欠かせない。SST(social skills training)の活用が十分に反映できるものといえる。
本稿では,SSTのエッセンスを取り入れて多彩な広がりをみせている現状を,障害のある人の就労準備から就労を維持するために行うSST,障害のある人の就労を推進・維持するために支援者が行うSST,企業側の社員が障害者理解を深め障害者の就業を支援するSSTや社員の振り返りのためのSST,さらには企業と支援機関との総合的な取り組み支援で行うSSTなどについて紹介する。
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