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English
特集 統合失調症の予後改善に向けての新たな戦略
包括的生活支援プログラム(ACT)による予後改善
How Assertive Community Treatment Improve the Prognosis of the People with Schizophrenia?
伊藤 順一郎
1
Junichiro ITO
1
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
1The Institute of Mental Health, National Center of Neurology and Psychiatry, Kodaira, Japan
キーワード:
Assertive Community Treatment
,
Recovery
,
De-institutionalization
,
Prognosis
,
Schizophrenia
,
People with severe mental illness
Keyword:
Assertive Community Treatment
,
Recovery
,
De-institutionalization
,
Prognosis
,
Schizophrenia
,
People with severe mental illness
pp.161-168
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101791
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はじめに
ACT(assertive community treatment)による予後改善を,認知行動療法や薬物療法による予後改善という文脈と同じ文脈で論ずることはできない。
なぜなら,ACTは治療技法ではなく,治療技法を載せた「器」だからである。コンピュータでいえば個々のプログラムが認知行動療法や薬物療法だとすれば,ACTはそのプログラムが動くOSだと考えたほうがよい。
そういう意味では,急性期病棟やデイケアが予後改善にどのように機能するのかというのと同じ文脈に,ACTというプログラムはあるのである。利用者のニーズに合ったプログラムをこなせるスタッフを有していれば,よい治療効果,支援効果を上げるだろうし,プログラムもあいまいでスタッフのスキルが低調なままでは,良い結果を出すことはできない。
さらにいえば,ACTの導入は,歴史的に,単なる新たなプログラムの導入にとどまらない。それは,欧米においては,脱施設化の促進であり,精神科病床の削減,ないしは慢性患者を長期収容する精神病院の廃絶と対になった出来事であった。多くの国においてACTに従事した初代のスタッフは,患者とともに精神病棟を出て,患者の生活の場を訪問してのサポートプログラムに従事したのである。したがって,ACTによる予後改善を検討することは,それが患者の路上への放置にならないような,良質な脱施設化による予後改善のあり方を問うことと重なってきた,といえるのである。
したがって,わが国でのACT定着を意図するにあたっても,おそらく,この文脈を外すわけにはいかないであろう。本論は,そのような背景を抑えたうえでの「新たな戦略」の検討である。
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