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精神科の医師は,誇りあるいは自虐(?)を込めて,精神科と身体科あるいは,精神科と一般科と自らの立ち位置を語ることがある。内科医あるいは外科医が,一般科と内科,もしくは外科と一般科と語るのを聞いたことはない。いわゆるマイナーと称される科でも同様である。そこには,脳とこころという問題だけではなく多くのことが隠されているようにも思えてならない。以下,人,場,時間という切り口から,一般科と精神科をもう一度見直してみたいと思う。
まず人である。これは,精神科医に一風変わった人間が多いということではない。その昔精神科ジャルゴンとの言葉があり,精神科の医師は独特の表現でよく分からぬことを話す人たちの集まりと語られることもあった。しかし,最近の若い医師と話していると,スラスラと薬物療法,心理教育,多職種チーム医療などと一般的な言葉で話す人が増えてはきている。一方,それに物足りなさや味気なさを感じているベテランの精神科医もいるとは思うが…。人ということを人員という点からみてみる。そこで,一般科と違いになると,精神科特例が登場する。精神科特例は,1958(昭和33)年10月2日の厚生事務次官通達(発医第132号)で,「精神病院を特殊病院と規定し,医師の数は一般病院の3分の1,看護婦数は3分2を可」としたもので,同年10月6日厚生省医務局長通知(発医第809号)では,「医師の確保が困難な場合暫定的にこれを考慮し運用することも可」というものである。具体的には,一般病床の場合に医師は,患者16人に1人(16:1)必要であるが,精神病床(大学病院などを除く)の場合は48:1で可とするものである。50年前のしかも暫定的とされたものが,未だに生き続けている。いったんできたものは,変えるのに大きな困難が伴うということであろうか。最近流行の精神科医師の求人広告をみていると,「当院は受け持ち患者は多いのですが…」に続き,「問題のない患者が多いので」との記載がその後にあった。何やらやりきれない気になってしまう。
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