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はじめに
アルコール依存症の治療には患者自ら進んで受診することが少なく,家族・友人といった周囲の者に勧められての受診が多い。これはアルコール依存症に特徴的な「否認」による影響が大きく,「自分がアルコールに関連した困難を抱いていること」や「自分がアルコール依存症であること」に関してなかなか認めることができないことに起因する11)。すべての医療に通じることであるが,アルコール依存症もまた予防医療,早期発見・早期治療を主眼とする治療を必要とするが,それがうたわれる時代に沿うことはできていない。一般内科に入院していた患者のうち,17.8%(男性患者では21.4%)もの人がアルコールに関連した問題を抱えている可能性があったと報告されている16)ように,医療機関を受診する患者の中に占めるアルコール関連の臓器障害や機能障害の割合は想像をはるかに上回るものである。これは決して日本だけにおける問題ではなく,ドイツにおいても,一般病院に入院していた患者の14.5%(男性25.4%,女性4.4%)もの人がアルコールに関連した問題を抱えていたと報告されている3)。また,総合病院において他科から精神科への紹介患者におけるアルコール・薬物関連疾患の割合は30%前後と報告されており1,13),連携医療の必要性を示唆している。
連携医療の概念より,「アルコール依存症を一般病院でスクリーニングして介入し,専門治療期間に紹介する連携医療を展開するための県内全域ネットワーク作り」を主眼として,1996年3月に第1回三重県アルコール関連疾患研究会(以下,当研究会)が発足した。当研究会はある患者紹介を通じた,三重大学第一,三内科の肝臓研究グループと三重県立こころの医療センター(当時は高茶屋病院,1999年改称)の連携に端を発している。以降アルコールに関連する問題を抱えている患者に対して,内科医・ソーシャルワーカーなどがブリーフ・インターベンションという介入技法を継続してきた。ブリーフ・インターベンションとはアルコール依存症者が持っている「飲酒問題はない」という否認を取り除くために,医療スタッフや家族などが飲酒問題を患者に述べ,気づかせる治療的技法9)を指す。南北に長い三重県の各地域において,多くの内科医と精神科医の協力により,以降年に2回(春・秋)開催し,1998年よりは看護交流会も始まり,2006年3月に10周年を迎えた。今回はアルコール依存症専門外来・病棟を持つ三重県立こころの医療センターへの紹介患者を中心に,当研究会開催による成果・影響を検討し,今後の課題について言及したい。
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