Japanese
English
特集 多様なアディクションとその対応
アルコール依存—対象の拡大と新しい治療法
Alcohol Dependence: The expansion of the intervention targets and new treatment techniques
武藤 岳夫
1
,
杠 岳文
1
Takeo Muto
1
,
Takefumi Yuzuriha
1
1国立病院機構肥前精神医療センター
1National Hospital Organization, Hizen Psychiatric Center, Saga, Japan
キーワード:
Alcohol use disorders
,
SBIRT
,
Controlled drinking
,
Anti-craving agent
Keyword:
Alcohol use disorders
,
SBIRT
,
Controlled drinking
,
Anti-craving agent
pp.121-129
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205535
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はじめに
現在,わが国のアルコール医療は,大きな変革の時期を迎えている。その理由の一つは,2013年にアメリカ精神医学会で診断と統計のためのマニュアルが第5版に改訂され,(Diagnostic and Statistical Manual, 5 th edition,以下DSM-5)2)物質使用障害の診断基準で,依存(dependence)と乱用(abuse)の区別がなくなり,新たに使用障害(use disorder)として一本化され,診断の閾値が低下したことである。このことにより,比較的軽症の患者も医学的な診断の対象となり,必然的に治療・介入の対象者も広がることとなった9)。
もう一つの理由は,2014年にわが国でアルコール健康障害対策基本法が施行され,基本法に基づく推進基本計画(以下,基本計画)が2016年に策定されたことである。基本計画では,アルコール健康障害に関する予防,相談から治療,回復支援に至る切れ目のない支援体制の構築が重点課題として挙げられており,医療におけるさらなる質の向上と連携の促進,すなわち早期介入に向けての具体的な取り組みが求められることとなり,現在各自治体レベルでの推進計画が策定されつつある。
本稿では,これまで依存症の治療とほぼ意味を同じくしていた,わが国におけるアルコール健康障害の治療の現状,また新たな介入技法や治療薬等について紹介し,今後の課題について考察する。
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