特集 精神病者と入院・1—精神科諸施設の存在と意味
事例研究を通して看護を考える—一般科から精神科に移って
熊倉 茂子
1
1東京都立墨東病院北2病棟
pp.928-932
発行日 1980年9月1日
Published Date 1980/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922684
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はじめに
精神科の開棟と同時に,勤務交代をした私にとって,この1年余は戸惑いの連続であった.
精神科看護の知識といえば,既に10数年前にもなるその昔の学生実習が唯一のもので,精神科への交代を自ら希望したとはいえ,その動機は,‘ちょうど勤務交代の時期であったから’という極めて単純なものであった.あえて言うならば,精神科開棟と聞いた時,学生時代にほんのわずか接したことのある患者の症状が,何か不思議で興味をそそられた,そのかすかな記憶が,私の野次馬根性を刺激したのかもしれない.‘何か,おもしろそうじゃない,一般科も少々あきたし……’という,あわれむべき根性の持ち主でもあったから,たちまちにして‘おもしろそう’は‘むずかしい’にとってかわり,患者のさまざまな症状に驚き,その対応に当惑ばかりすることになった.
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