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はじめに
メンタルヘルスの問題に対する臨床心理学的な治療技法として認知行動療法(以下CBT)が欧米において主流となっている。さまざまな精神障害やメンタルヘルスの問題に対するCBTの有効性は多くの研究が示すところであり,特にうつや不安に対する高い有効性から,英国国立医療技術評価機構(NICE)が定める段階的ケアモデルにおける主要な治療技法の一つとなっている27,28)。
CBTの有効性が多くのエビデンスから実証されるにつれ需要が高まり,欧米ではCBTを実施するセラピストの不足が深刻な問題となっている36)。個別面接の形態でCBTを実施するには,セラピスト側にも患者側にも非常に大きな時間的・経済的コストを要してしまう。そこで,より低コストでCBTを実施するため,インターネットを通じてCBTを提供する試みがなされるようになった42)。従来,個別・集団での臨床面接の場で実施されてきたCBTの一部またはすべてをインターネット上で実施するこのようなサービスは,computerized CBTやInternet-based CBTなどと称され(以下CCBT),人件費などのコストを削減できることや,さまざまな理由から従来のCBTへのアクセスが困難であった対象者に対しても提供できるといったメリットから,欧米において多くのサービスが展開されるようになっている。CCBTの長所を表1に整理した。
CCBTの有効性は多くの研究が示すところであり24,33,34,45),複数の研究を対象としたレビューの結果からもうつ・不安の治療に関して対面式の臨床面接と同等かそれ以上の有効性が示されている18,19)。CCBTの有効性についてのエビデンスを受け,NICEもうつや不安に対するCCBTの利用を推奨している26)。
わが国においても,2010年にCBTに対する診療報酬が新設されるなど,CBTに対する社会的ニーズが高まっており,加えて国民の間でのインターネット普及率が80%に迫ること37)から,今後インターネットを用いたCBTの展開が期待される。そこで本研究では,うつに対する国内外におけるCCBTサービスを概観し,わが国における今後の展望を述べることを目的とする。
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