巻頭言
DSMについて
塩入 俊樹
1
1岐阜大学大学院医学系研究科 精神病理学分野
pp.208-209
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101376
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なぜDSMの話をするかというと,DSMを20年以上にわたって大学病院などの研究医療機関において日常臨床の場で綿密に使用し続けてきた経験を持つ精神科医は,わが国では稀有な存在ではないかと思うからである。
私は1987(昭和62)年に医師となったので,現在22年目の精神科医である。当時は入局1年目から大学院へ進学できたために,医者1年目から研修医と院生という二足の草鞋を履くこととなった。私が入局した母校の滋賀医科大学では,すでにDSMが日常臨床で当たり前のように用いられていた。というのも,今も私の部屋の本棚にある1982年3月初版のDSM-Ⅲの訳本(「精神障害の分類と診断の手引」,医学書院,以下“手引き”)は,初代教授であった高橋三郎先生が中心となり翻訳されたものだったからである。とはいっても当時DSMを用いて診断をしている施設はわが国ではまだ皆無であったので,出張先の病院では従来診断を教えていただき,大学ではDSMを学ぶといった,診断学的にも二足の草鞋(?)となった。そして結果的には,この両方向性が私の診断能力の向上に非常に役に立ったと思っている(後述)。
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