オピニオン DSM-5—私はこう思う
DSM-5と症例の定式化—DSMを上手に使う
中川 敦夫
1
1慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター
pp.632-634
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204969
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
米国精神医学会より,精神障害の診断と統計マニュアル第5版Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th edition(DSM-5)2)が2013年に発表され,その日本語翻訳版が2014年に刊行された。DSM-5は当初ディメンションによる診断分類が導入されると言われていたものの,最終的にはその導入は時期尚早との判断から見送られ,従来のDSMカテゴリカル診断分類が踏襲された。その一方,統合失調症スペクトラム障害や自閉症スペクトラム障害という名称の登場のように疾患のスペクトラム性は意識され,疾患スペクトラム内の近縁疾患はDSM-5では隣り合った項目に収載され,他方ではⅠ軸診断,Ⅱ軸診断のようなカテゴリカルな多軸診断は廃止された。そして,症例の定式化や臨床判断が重要視されるなど,DSMは臨床家が診断を行うのを助けるための道具であるという注意が記載され,操作的診断のトーンが少し変わってきたようである。
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.