Japanese
English
研究と報告
起訴前簡易鑑定とDSM診断―52事例の経験
DSM-ⅣDiagnoses in Forensic Settings
髙橋 三郎
1
,
塩入 俊樹
2
Saburo TAKAHASHI
1
,
Toshiki SHIOIRI
2
1埼玉江南病院
2新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野
1Saitama Kounan Hospital
2Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences
キーワード:
DSM-Ⅳ diagnosis
,
Criminal responsibility
,
Legal prosecution
,
Diminished control over the behavior
Keyword:
DSM-Ⅳ diagnosis
,
Criminal responsibility
,
Legal prosecution
,
Diminished control over the behavior
pp.153-159
発行日 2003年2月15日
Published Date 2003/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100637
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抄録
1999,2000,2001年の3年間でいわゆる簡易鑑定を52件行った。
検察官意見による診断を要する理由の第1は精神科受診歴で29件(56%),このうち,捜査資料による精神科初診医診断が精神分裂病(統合失調症)は14名(48%)あったが,鑑定時のDSM-Ⅳ診断で精神分裂病とされた者は3名しかいない。一方,初診が気分障害であった者8名中では6名が鑑定時診断も気分障害,その他の診断でも鑑定時診断と一致が7名中5名であった。このことは精神科医が広く精神分裂病という病名を使用しすぎていたことを示している。これら52件のDSM-Ⅳ診断,重複診断を含む74の診断は,人格障害21,アルコール中毒など14,精神分裂病および妄想性障害8,気分障害8,精神遅滞6,アンフェタミン関連障害4,その他の順となった。
責任能力との関係では,全52件中,限定責任能力と責任能力なしを合わせて20件(38%)であったが,精神分裂病・妄想性障害では8件中6(75%)となり有意に多かった(p<0.05)。精神医学はいまだに十分な証拠に基づいていない医学の分野であるが,簡易鑑定にあたってはどこかに線引きをしなければならず,そのためには少なくともDSM-Ⅳのような国際的に標準化された明確な基準による的確な論理が説得力を持つ。
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