「精神医学」への手紙
認知症高齢者の褥創に対するラップ療法
横田 修
1
,
高橋 淳
2
,
藤沢 嘉勝
3
,
佐々木 健
3
1東京都精神医学総合研究所高齢社会プロジェクト老年期精神疾患研究チーム
2水口病院精神科
3きのこエスポアール病院精神科
pp.923
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101280
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本誌50巻1号で精神科病院での褥創治療におけるラップ療法の可能性が指摘された1)。我々はこの意見に賛成する。ラップ療法が従来の治療より有効である可能性を示した論文は,我々のグループの高橋らによる2006年の報告2)が最初で恐らく唯一の論文である。掲載されているJ Wound Care誌編集部の許可のもと,その要旨をここで紹介したい。
対象は認知症専門病院に入院し,重度の褥創(日本褥創学会によるDESIGN scaleでstage ⅢかⅣ)を有す終末期の認知症患者で,効果や安全性が確立されていないことを説明したうえで家族が希望した25例(平均80.3歳)にラップ療法を,希望しなかった24例(同79.8歳)にイソジン,抗生剤,各種酵素,プロスタグランジンなどを含む軟膏とガーゼ保護を用いる従来の治療を行った。多量の滲出液や局所感染を伴う例も対象に含めた。2群の全身状態に有意差はなかった。壊死組織は,デブリードメントを行ってから治療を開始し,4,8,12週でDESIGN scaleで褥創を評価した。その結果,両群とも同スコアは改善したが,すべての時点でラップ群が従来治療群よりスコアは良好で,12週目にその差は統計学的に有意となった。完治率はラップ群と従来群で20%と8.3%,悪化率は8.0%と12.5%,局所感染発生率は16~17%で同等,外科処置の追加を要した率は20%と50%であった。我々の検討では,ラップ療法は重度の褥創に対して従来の治療より有効で,安全性に差はなかった。ラップ療法が褥創治療の選択肢となり得るか,精神科医として,結果が追試されることを望んでいる。
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