動き
「第55回日本病跡学会」印象記
津田 均
1,2
1名古屋大学学生相談綜合センター
2名古屋大学大学院医学系研究科
pp.924-925
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101281
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第55回日本病跡学会は,2008年5月23,24日の両日,東洋大学で,河本英夫会長のもとに開催された。
病跡学を型どおりに過去の傑出した人物の病の実証研究とするならば,それは,すでに前提とされている精神医学枠の応用例題にとどまる危険がある。それならば,伝記,作品,自伝などの詳細な研究が可能であるという利点を最大に生かしても,精神医学そのものを動かす学問となりがたい。本邦の病跡学がこのような危機に一時陥りかかったことは否めない。しかし病跡学の本来の役割は逆の方向にあるのであって,病跡学的研究は精神医学を進化させるためのものである。本学会は,そのような方向に再度離陸しているように思う。再度というのは,広い意味での病跡学的研究の創設期(クレッチマーの天才研究,フロイトの神話や文学作品への言及などが範例である)がそうであったからである。精神医学にはどこかに,その跳躍の源を創造の営み一般から汲み出す必然性があるのだろう。病跡学は,その誕生の瞬間を繰り返すことによってのみ本来の生命を維持することができる。
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