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はじめに
「発達障害者支援法」が施行されて3年が経過した。この間,「発達障害者支援センター」は,全国都道府県および政令指定都市において整備が進み,現在,その数は60か所を超えている。発達障害者支援センターにおける相談支援については,基本的にすべてのライフステージに対応することとされている。東京の場合,2003年1月に「自閉症・発達障害支援センター」として事業を開始した当初から,青年期,成人期の人にかかわる相談が全体の5割を占めていた。そして,この1~2年の傾向として,とくに20歳代,30歳代の人についての相談が年ごとに高い伸びを示しており,2006~2007年度にかけての相談事業実績においては,その両者だけで全体の5割を超える数であった。そのうち,高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群など)の診断を受けている,あるいはその疑いがあるという人の割合は,他の障害特性に比べて圧倒的に高くなっている。
筆者らは,5年前に発達障害者支援センター事業を開始した当初より,高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群など)の当事者である人たちに協力を求め,「グループヒアリングの会」を月に1度行ってきた。当事者の人たちがそれぞれ非常に苦労し,努力して生活している実態は,外側からはみえにくく,わかりにくいといわれており,自閉症支援に長年取り組んできた筆者らも,いわゆる高機能群の人たちへの支援は新たな課題であった。そのため,まず,本人の立場からこれらの課題をとらえたいと考え,小人数のグループヒアリングによる聴き取り調査を実施することにした。これまでの経過の中で,そこに参加する人たちにとっても,「相談」というかたちでなく,一定のテーマのもと,聴き手である私たちとのやりとりを通して自分の考えや思いを表現してもらうことにより,新たな自己覚知が得られたり,同時に他の当事者の発言も聞き,わが身を省みるというような場となってきている。
本稿では,これまでのグループヒアリングを通して得られたことをもとに,考察を進めてみたい。
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