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特集 成人期のアスペルガー症候群・Ⅱ
臨床現場からみた成人期のアスペルガー症候群
Asperger Syndrome in Adulthood:The Difficulties in giving the Diagnosis in Clinical Settings
宮川 香織
1
,
桝屋 二郎
2
,
飯森 眞喜雄
1
Kaori MIYAKAWA
1
,
Jiro MASUYA
2
,
Makio IIMORI
1
1東京医科大学精神医学講座
2神奈川医療少年院
1Department of Psychiatry, Tokyo Medical University, Tokyo, Japan
2Kanagawa Medical Juvenile Training School, Sagamihara City, Japan
キーワード:
Asperger syndorome
,
Adulthood
,
Diagnosis
,
CARS
,
TEACCH
Keyword:
Asperger syndorome
,
Adulthood
,
Diagnosis
,
CARS
,
TEACCH
pp.749-757
発行日 2008年8月15日
Published Date 2008/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101255
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はじめに
近年,「アスペルガー症候群」の診断で大学病院に紹介されてくる患者が増え続けている。なかにはインターネットの記事を見て自己診断し,「アスペルガーではないか?」と受診する者も出てきている。世間の耳目を集めた青少年の犯罪報道でも,この診断名がすでに医学的概念が定まっている疾患であるかのように書かれている。しかし,ベテランの精神科医に「アスペルガーって何ですか?」と訊いても,明瞭な答えが返ってくることはほとんどない。「こういうものだ」「ああいうものだ」と,まるで正体のつかめないヌエのような疾患らしい。ましてや,成人例ではいっそう不明瞭である。
こうした背景があってか,日本の精神医学雑誌でも「アスペルガー特集」がにわかに目につくようになっている。本特集もそうした現状の中で編まれている。だが,アスペルガー症候群は実際に増えているのだろうか? それとも,精神科医が時流に乗って安易に診断し始めたために増えたように見えるだけなのであろうか?
近年の数多い論文では,疾病概念や症候学的問題,分類や診断上の問題,他の精神疾患との異同などが取り上げられることが多いが,ここではあまり取り上げられることのない,臨床現場からみた成人のアスペルガー症候群の問題について述べてみたい。
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