2頁の知識
ねずみ取りの薬
橋本 正已
1
1国立公衆衛生院
pp.32-33
発行日 1957年11月10日
Published Date 1957/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201525
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主な殺そ剤の種類と性質
殺そ剤にはいろいろな種類があるが,現在伝染病予防法で防疫用薬剤として指定されているのは,黄燐製剤,亜砒酸製剤,アンツー,クマリン系殺そ剤の4種類である.まず黄燐製剤は古くから用いられているもので,各種の製品があるが,黄燐8〜10パーセントを含む糊状のものが多い.製剤はニンニク様の特殊な臭気と味を持ち,暗い場所では燐光を発するがねずみはこのような臭味を忌避しない.黄燐はねずみの肝臓を強く犯す性質を持ち,人畜に対しても毒性が強いが不快な臭気があるため誤食の危険は比較的少ない.この種の製剤は皮膚を犯すから直接手指で扱うことは禁物である.伝染病予防法では,毒えさ1個(1g)にっき黄燐として0.02gを含有するよう定められている.次に亜砒酸製剤としては,無水亜砒酸と亜砒酸石灰がある.無水亜砒酸(As2O3)は白色無味無臭の粉未で,人畜に対しても毒性が強いため,普通着色して小麦粉等との誤認を防ぐ.餌の中に5〜10パーセント混合して使用する.亜砒酸石灰Ca(As'O2)2は灰白色,無味無臭の粉末状固体で,ねずみに対する毒性は無水亜砒酸よりはるかに強く,人畜にも毒性が強い.餌に2〜5パーセントに混合して,団子,又は粉のまま与えるか,パンや生甘藷の外側にまぶして使うこともできる.亜砒酸石灰は殺虫力もあるので,これを食べて死んだねずみはミイラ状になり,ウジが発生しない.
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