書評
―Benjamin J. Sadock,他編―Kaplan & Sadock's Synopsis of Psychiatry;Behavioral Sciences/Clinical Psychiatry, 10th ed.
兼子 直
1
1弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座
pp.1274
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101125
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本書は1972年に初版が出されて以来,精神科医師からだけでなく,幅広く,一般臨床医,臨床心理士,作業療法士など多くの領域の読者から好評を博してきた。第10版には2006年までの最新の文献が引用されており,全面的に改訂されている。内容はDSM-IV-TRに準じ,疫学,病態,鑑別診断,分類,検査,予後,治療が的確に記載されており,重要な文献も付記されている。同時にICD-10の診断基準も採録されており,きわめてバランスの良い精神医学の教科書となった。
本書は索引を入れると1,470ページとなりかなり厚い本ではあるが,読みやすい見出しで59章から構成されている。各章は「整理された知識を短時間で理解しやすい」ように多数の図表,PETや脳の活性化された部分を示すカラー写真などが効果的に組み込まれており,これは見事な工夫といえる。精神神経疾患領域にまたがる神経疾患も各論に含まれており,実際の臨床に役立つ。総論でも患者―治療者関係,発達とライフサイクル,脳と行動,重要な理論を説明した心理社会科学,各種検査や精神科領域で用いられる評価尺度から精神医学における倫理の問題など,精神科領域の基本的事柄が取り上げられており,本書は一般臨床医だけでなく,臨床心理士,作業療法士などを育成する教育に携わる方々にもすばらしい教科書と考える。
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