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「避けることのできる死」を防ぐために必要な情報を収載
平成18年6月15日にはわが国の自殺対策の要となる「自殺対策基本法」が成立し,同年10月28日に施行された。本法の目的は,自殺対策を総合的に推進して,自殺の防止を図り,あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を図り,もっと国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与すること,とされている。本書『医療者が知っておきたい自殺のリスクマネジメント第2版』の著者は,精神科医であると同時に,わが国をリードする自殺予防対策専門家である。そして,本書は,自殺対策の総合的推進という大きな流れの中でタイムリーな改訂がなされたものである。
わが国では1998年に年間自殺者が前年度比130%以上という,他国に類のない激増をみた。現在でも,実に交通事故による死者数の約4~5倍もの人が毎年自殺によって命を落としている。さらに,自殺未遂はその10倍以上ともいわれており,家族や友人など周囲の人々が受ける心理的影響を考慮すると,毎年,百数十万人の人々が自殺問題に苦しんでいることになる。近年の自殺死亡者数増加の背景には,健康問題(精神疾患・身体疾患),経済・生活問題,家庭問題のほか,人生観・価値観や地域・職場・学校教育のあり方の変化等,さまざまな社会的要因が複雑に関係しており,予防対策の実施に当たっては多角的な検討と包括的な対策が必要になる。一方,自殺した人の多くは自殺前の1か月間に医師のもとを受診していたと報告されているが,その多くは精神科医ではなく,一般診療科を受診していたことが明らかになっている。したがって,プライマリケアの場や自殺未遂者が搬送される救急医療において一般診療科の医師がうつ病患者等の自殺ハイリスク者を早期に発見し,専門医等に紹介し,適切なサポートを早期に提供することは,自殺予防の重要な第一歩となる。
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