コーヒーブレイク
友ありて
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.494
発行日 2002年5月15日
Published Date 2002/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905097
- 有料閲覧
- 文献概要
今年の正月は粉雪で始まった.窓外の信濃川の河面に霏々と舞う雪を眺めながら一杯飲んだ.沢山の年賀状の中に目を惹く一通が混じっていた.馬の蹄を直している兵卒を描いた版画で,1945正月イダ2等兵と書いてある.旧制高校の友人イダのもので,当時の賀状を再現したのかと思ったが昭和20年は午年でないし,2等兵の彼が賀状を出すはずもない.午年の今年に当時を思って版画にしたものと解釈し,構図の妙と共に感心した.
60年前高校入学以来の永いつき合いが懐しく断片的に浮んできた.つい去年の秋も東京在住の連中から全国旧制高校卒業生の制作展が開かれるので見学がてらクラス会を催すから出てこいという案内がきた.あまり行ったこともない王子駅の近くのビルで沢山の絵画や書から版画,彫刻まで展示され,素人ばなれしたものが多く,趣味の豊かさに感服した.イダもきており,その版画はかなり高い評価のようであった.荒波の海辺で岩海苔とりをしている女達の姿が描かれていた.アフガンの女のように覆面をしているので場所は新潟の笹川流れか山形海岸だろうといったら福井の東尋坊だという答えであった.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.