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「せん妄の薬物療法においてベンゾジアゼピン系薬剤はどのように使用されているか」(和田健,他,本誌49巻2号:193-197,2007)で,せん妄の薬物治療として紹介されている「サイセレ点滴」(haloperidolとflunitrazepamの混注による点滴静注)に興味を抱くとともに疑問を感じた。和田らは「haloperidolとflunitrazepamとを交互に静注または点滴静注することは,一般病棟の夜勤帯という状況を想定した場合には実際的でない…混注して点滴静注という形で使用している…当院では鎮静時の注意事項を明示したうえで運用」などと述べている。
第一に,本論文でも指摘されているように,せん妄患者は高齢で身体疾患が多い。また「精神運動興奮が著しいから経口ではなく静注が必要である」と考えれば,静注が必要な症例は身体面も重症であると推測される。このような症例では向精神薬の副作用も出やすい。第二に,haloperidolとflunitrazepamの混合調剤については,外観やpHの変化はないとされる1)が,両薬剤を同時に投与することによる体内薬物動態や副作用の出現などの安全性に関する十分なデータはない。このような状況を考えると,単剤の注射剤や経口薬による投与に比べて,医師自身による診察や処置,および一定期間の経過観察が不可欠であるように思われる。和田らも,併用によるリスクやベンゾジアゼピン系薬剤の使用を避ける必要性を指摘しているものの,「サイセレ点滴」という方法がこのような形で雑誌に紹介されることは適切であろうか。混注が一般的になると,経口や単剤による対応が可能な症例にも拡大適用されかねないという危惧もある。
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