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はじめに
国連は,1980年(昭和55年)の同総会において「国際障害者年行動計画」を決議し,1981年は国際障害者年として「完全参加と平等」をテーマにノーマライゼーションなどの原則を定め,さらに1983年からの10年間を国連・障害者の十年とした。こうした経緯の中で,世界保健機関(WHO)は1980年に1972年以来検討中であった「国際障害分類(International Classification of Impairments, Disabilities, and Handicaps:ICIDH)」(試案)を公表した8)。その中に示された障害構造モデルというのは,国際障害者年およびその後の障害者十年での障害者問題に対する正しい理解を普及させるうえで重要な役割を果たしたといえよう。
また,WHO精神保健部は精神科的症状や精神疾患に伴って生じた能力障害の評価のために,1988年に先のICIDHを参照するような形でWHO Psychiatric Disability Assessment Schedule(WHO/DAS;精神医学的能力障害評価面接基準)を開発した9)。次いで,同精神保健部は1992年にICD-10Fを発表したとき,従来のICDシステムの欠陥を補充すべくICD-10Fファミリーとも言うべきさまざまなバージョンを次々に提案した。それらは,中核的な出版物である「グロッサリー集」(Glossary),「臨床記述・診断指針」(CDDG),「研究用診断基準」(DCR)に加えて,「プライマリケア版」(PC),「一般医のための教育パッケージ」(Educational Package)であり,「多軸記載法」(Multiaxial Presentaion),信頼性ある症状評価のための「統合国際診断面接法」(CIDI)や「精神神経学臨床評価表」(SCAN),「国際人格障害検査表」(IPDE),および「症状チェックリスト」(ICD-10F/SCL)であり,さらに利用者の便宜を図るためのICD-8/ICD-9/ICD-10「対照表」(Cross-Table),「用語集」(Lexikon)などである。それらの中で,多軸記載法10)は臨床診断のための第Ⅰ軸に次いで,第Ⅱ軸では前記のWHO/DASに基づくWHO/DAS-Sが活用されるように計画されている。
ICIDHが国際的に見てどのように活用されたかの実際については詳しく知る由もないが,日本国内の医学医療分野に限って活用状況を通覧したとき必ずしも十分ではなかったように思う。後記するような3種の障害ステップはかなり周知されたものの,いかに具体的に活用および展開されたかについては問題がある。
さらに今回,ICIDH-2から発展したICFについても,日常の診療や研究からすると,必ずしも容易に取り組めるテーマとは言い難く,より十分な啓発のもと,理解を高め,そして積極的に活用を勧める方策を練る必要がありそうである。
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