オピニオン 精神科における医療安全管理
医療観察法における医療安全管理―とくに鑑定入院について
松下 正明
1
1都立松沢病院
pp.934-937
発行日 2005年9月15日
Published Date 2005/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100099
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はじめに
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下,医療観察法)が,2003年7月16日に公布され,2年間の準備期間をおいて,2005年7月15日より施行されることになった。
本稿に与えられた課題は,医療観察法が施行された時に,対象者(鑑定,入院,通院を問わず,医療観察法に基づいて治療の対象者になる精神疾患者をここでは対象者と称する)にとってどのような医療安全管理が必要であるのかを考察することにある。しかし,本稿を執筆している時点では,鑑定入院がやっと開始され,入院や通院治療はまだ実施されていない状況にある。したがって,本稿は,医療観察法の現場の実状に基づいての記述というよりは,あくまでも予測される範囲での,とくにすでに開始された鑑定入院における種々の問題点の指摘ということにとどめざるを得ない。
なお,蛇足として付言すれば,ここでの安全管理は医療観察法医療にかかわるスタッフの安全管理のことではない。この種の安全管理についての議論は医療安全管理とは異なった次元で論じられてもいいが,医療観察法の対象者が怖い,恐ろしいからという理由からのスタッフの安全管理という考えは,対象者を含めた精神障害者への冒瀆であり,偏見や誤解,さらにはそれに基づく差別そのものであることを知っておかねばならない。
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