書評
改訂版 精神救急ハンドブック 精神科救急病棟の作り方と使い方
澤 温
1
1さわ病院
pp.923
発行日 2005年8月15日
Published Date 2005/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100096
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著者,計見一雄先生は,その個人史から見ても,精神医療改革の中で治療の開放化を進め,さらにこのバックアップや精神疾患への偏見の除去のためにもメディカルモデルの極として精神科救急を位置づけられ,これを創始し,発展流布し,システムが広がりやすい診療報酬ができるように努力されてきた。このハンドブックは,精神科救急は思想と実践であり,その思想は精神疾患をどのようにとらえ,また精神疾患を持った患者をどのようにとらえ,どのように治療,処遇しようとし,そのためにはどのような救急医療システム(治療の場の構造,人の配置,治療技術,さらにそこで働く人の処遇)や救急治療の場にとどまらず病を持ちつつ社会で生活をし続ける人々のために,さらに広いどのようなシステムが必要かを考える,そういった包括的な立場に立って救急医療の位置づけをはっきりさせるという思想でなくてはならないと教えてくれている。
本書の名前が「精神科救急ハンドブック」でなく「精神救急ハンドブック」として医療以外の人にも興味を持って欲しいとあとがきに書いておられるが,ここにも著者の思想が現れている。つまり著者の考えておられる精神(科)救急のすべての面が現れている著書であると言える。しかも著者は思想家,理論家であるにとどまらず,常に実践こそ救急医療であることを身をもって示してこられた。
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