Japanese
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展望
人格障害の90年―Koch, Schneider,そしてDSM-Ⅲ
Ninety Years of the Concept of Personality Disorder: Koch,Schneider, and DSM-Ⅲ
中谷 陽二
1
Yoji NAKATANI
1
1筑波大学大学院人間総合科学研究科
1Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba
キーワード:
Personality disorder
,
Psychopathy
,
Koch Schneider DSM-III
Keyword:
Personality disorder
,
Psychopathy
,
Koch Schneider DSM-III
pp.674-684
発行日 2004年7月15日
Published Date 2004/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100512
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はじめに
今日,人格障害は精神医学のトピックスの1つとなり,日常臨床においても他の精神障害に劣らない重みをもっている。こうした人格障害論の活況は1980年のDSM-Ⅲ1)を転換点とする大きな流れのように思われる。
DSM-Ⅲから遡ることおよそ90年,Kochは『精神病質低格』12)を著した。Kochの学説はSchneider25)によって精神病質問題の全領域を切り開いたと評され,他方ではMeyerにより移入されることでアメリカ精神医学での精神病質に姿を変えた15)。Kochの概念は中田16)の言葉を借りれば「精神病質概念の1原点」であり,ひいては現代の人格障害論の源流をなすと言えるであろう。
DSM-Ⅲが局面を塗り替えたことで,それ以前の90年はあまり顧られなくなっている。しかし人格障害をめぐるさまざまな今日的課題を解く鍵はDSM-Ⅲの前史に埋もれているかもしれない。小論ではKoch,Schneiderを主軸としながら精神病質/人格障害概念の流れをたどり,DSM-Ⅲで何が変わったか,またその得失は何かについて論じてみたい。
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