Japanese
English
綜説
シアル酸と動脈硬化性疾患
Sialic Acid and Atherosclerotic Diseases
若林 一郎
1
Ichiro Walcabayashi
1
1兵庫医科大学衛生学
1Department of Hygiene Hyogo College of Medicine
pp.1201-1207
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404910079
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はじめに
大部分のシアル酸はN—アセチルノイラミン酸であり,生体内で複合糖質の構成成分として細胞膜表面のオリゴ糖の末端に存在し,重要な生体機能を担っている.このうちでも重要なものは糖蛋白と糖脂質であり,その糖鎖非還元未端のシアル酸をノイラミニダーゼで外すと,細胞膜の機能やホルモン,酵素を含む血中糖蛋白の機能が変化する.血漿中のシアル酸の99%以上は糖蛋白または糖脂質と結合して存在し,血漿中シアル酸濃度の50%以上がα1酸性糖蛋白(シアル酸含量12.1%),α1 アンチトリプシン(同3.6%),α1アンチキモトリプシン(同6.0%),ハプトグロブリン(同5.3%),α2マクログロブリン(同1.8%),フィブリノーゲン(同0.6%)などの急性期反応蛋白に由来する.このようにシアル酸は感染症や膠原病などの炎症性疾患の際に高値を示し,炎症のマーカーとして利用されてきた.また,シアル酸は細胞膜の構成成分として生体に存在するため,悪性腫瘍など組織崩壊性疾患のマーカーとしても有用である(表1).
近年,血中シアル酸により心血管疾患のリスクを予知できるという疫学データが報告されて以来,動脈硬化性疾患とシアル酸との関係が注目されている.そこで本綜説では動脈硬化の成因,危険因子および動脈硬化性疾患とシアル酸との関連性について概説する.
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