Japanese
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Current Opinion
肺癌の分子標的療法
Target-based Therapy for Lung Cancer
西尾 和人
1
Kazuto Nishio
1
1国立がんセンター中央病院計画病棟支援施設
1Support Facility of Project Ward, National Cancer Center Hospital
pp.1243-1247
発行日 2002年12月15日
Published Date 2002/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902581
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肺癌の分子標的治療をめぐる最近1年間の話題
分子標的治療は標的となる分子を設定し,それに対する創薬や治療法を開発していく治療戦略である.その戦略に基づいて,実際に分子標的薬,抗体,細胞療法などの新しい治療法の有効性が臨床の場で検討されるようになってきた.この1年間の話題としては,分子標的薬の肺癌における臨床効果が明らかとなってきたことである.
特に非小細胞肺癌に有効性を示す経口の上皮成長因子受容体(EGFR)特異的チロシンキナーゼ阻害剤ZD1839(Iressa®)は,わが国において世界に先駆けて有効性が見出され,迅速に上市された.同薬におけるこの一連の流れは特記すべき話題となっている.ZD1839の開発を観察してくると,従来の抗癌剤の開発の流れと異なる点に気づく.例えば,患者およびその家族などの知識が増え,期待度が増し,患者からの使用要望が高いことを聞き及ぶ.その原因としては,有害事象が従来と異なり,また軽微であることが予想されること,また経口薬であることなどが想像できる.それと同時に臨床家にとっては,分子標的治療の「分子」に対する生物学的興味が増してきたように感じられる.Iressa®が臨床で使用され得る現在,分子標的薬の舞台はますます実地臨床の場に移ってくる.わが国における肺癌治療における分子標的薬の動向は世界の注目するところとなっている.抗悪性腫瘍薬の場合,わが国においては端的にいうと,抗腫瘍効果の頻度と安全性の確保により認可されるわけであるが,本当の有効性(生存率の改善など)が証明されていない場合がある.Iressa®を世界に先駆け上市したわが国の責任は大きい.
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