巻頭言
肺癌の分子標的治療と効果予測因子
清水 英治
1
1鳥取大学医学部呼吸器内科
pp.1037
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100470
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肺癌は人口の高齢化に伴い急増しており,2004年から死亡者は年間6万人を超え,近い将来10万人に達することが予測されている.この30年間で手術不能肺癌の生存期間は6カ月より10カ月に改善しているが,抗癌剤による副作用出現などにより,長期間緩解の得られる患者は少ない.個々の患者に有効な抗癌剤を予測し,効果のある抗癌剤のみを長期間投与できればさらに治療効果は上がるであろうが,現実にはプラチナ製剤を中心とした2剤併用療法を4~6クール投与するのが一般的である.腫瘍特異的な治療法とその効果予測因子の確立が望まれる.
腫瘍特異的な治療法の効果予測因子として,既に乳癌でエストロゲン受容体,プロゲステロン受容体やHer2/neuの発現が利用され,ホルモン療法や抗体療法による長期間の緩解に貢献している.しかし,肺では未だ確立されたものは存在しない.最近,非小細胞肺癌の治療にゲフィチニブやエルロチニブなどの上皮成長因子受容体(EGFR)のリン酸化を阻害する分子標的治療薬が導入され,奏効患者に特徴のあることが知られている.すなわち,非喫煙者,アジア人,腺癌組織,女性で奏効率が高い.特に腺癌の一亜型である気管支肺胞上皮癌は抗癌剤に感受性が低いが,EGFR阻害剤には感受性が高い.どの患者にEGFR阻害剤の効果があるかが分子レベル(EGFR遺伝子の変異やコピー数の増加,EGFR蛋白の発現,EGFR関連分子の発現など)で検討されている.
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