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はじめに
肺結核症の治療は,感受性薬剤を多剤併用し,患者が実際に服用しているかどうかを確認することにつきる.最も頻度の高い治療失敗の原因は患者の治療中断であり,他は耐性結核に対する治療失敗や副作用のある者の治療失敗である.
WHOは,世界の結核を撲滅するためには開発途上国では塗抹陽性結核の85%以上を治癒させることが必要と推定している1).WHOが提唱したDOTS(Directly Observed Treatment,Shortcourse)で治療成功率が改善され,それによって地域の結核罹患率の低下や耐性菌の頻度が低下したことなどから2),これらのDOTSの有効1生を背景に,WHOは「総ての患者にDOTSを」と呼びかけている.
また,WHO/IUATLDは,耐性菌の発現を抑制しなければ結核を撲滅することはできないとし,1994年から世界の薬剤耐性菌サーベイランスを開始し,すでに二度の報告を行っている3,4).そのなかで,薬剤耐性頻度はその国の結核対策の良否と関連があること,すでに耐性結核は全世界の問題となっていること,特に多剤耐性結核は現在の結核対策に驚異を与えていることなどを警告している.しかし,耐性菌の頻度の高い地域ではDOTSでは不十分であり,DOTS plus5)が提唱されている.
一方,日本の結核化学療法の治療成功率は63%と報告されているが6),53%は治療成績が報告されていないので,全国的にどのくらい治療が成功しているのかの確かな数字は不明である.また,DOTSは特定の地域で特定の患者に試みられているのみであるが,耐性菌の発現を抑えるためにもDOTSを導入することが望まれる.
本稿では,治療を成功させるために治療内容の選択と副作用への対処,そして如何にして患者の服薬を確実にさせていくかについて述べる.
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