Japanese
English
綜説
EDHFと循環調節
Endothelium-derived Hyperpolarizing Factor (EDHF):Its role in the circulatory regulation
佐久間 一郎
1
,
北畠 顕
1
,
深尾 充宏
2
Ichiro Sakuma
1
,
Akira Kitabatake
1
,
Mitsuhiro Fukao
2
1北海道大学医学部循環器内科
2北海道大学医学部第2薬理
1Department of Cardiovascular Medicine, Hokkaido University School of Medicine
2Department of Pharmacology, Hokkaido University School of Medicine
pp.605-613
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901269
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はじめに
血管内皮細胞はアセチルコリン(ACh)やサブスタンスP(SP),セロトニンなどの血管作動物質や,血流によるズリ応力などの機械的刺激に反応して種々の血管弛緩物質を生成し,血管を拡張させて局所の循環を調節する.この内皮由来血管弛緩物質としては,アラキドン酸のシクロオキシゲナーゼ代謝物であるプロスタサイクリン(PGI2)や,L—アルギニンのグアニジノ窒素分子が酸化されて生成する一酸化炭素(NO=endoth—elium-derived relaxing factor:EDRF,内皮由来弛緩因子)が知られている.
しかるに最近,内皮細胞は平滑筋細胞膜の過分極を介して血管を拡張させる新たな物質を生成することが明らかとなった1).この第三の内皮由来血管弛緩物質は内皮由来過分極因子(endoth—elium-derived hyperpolarizing factor:EDHF)と呼ばれ,とくに小動脈や細動脈などの抵抗血管で循環制御に重要な働きをすることが証明されているものの,その本態はいまだに不明である.EDHF研究ではEDHF存在の確証として,平滑筋細胞の膜電位測定という,いわば職人芸とも言うべき難しい技術を要するため,世界でも数えるほどの施設でしか実験が行われておらず,そのため研究の進展も遅かった.
本稿では,最近急速に進みつつあるEDHF研究の現在までの流れを概説するとともに,われわれの最新の知見を加え,その循環調節における役割について言及したい.
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