社会の動向
忘れぬうちにやつてくる
長谷川 泉
pp.46-47
発行日 1959年12月1日
Published Date 1959/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201816
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喉もとすぎればあつさを忘れる,とか,あるいは災禍は忘れた頃にやつてくる,ということばがある.人間の楽天的な性向や,それに伴う油断を言つたことばである.人間の悲しいさがについてのもの言いである.だが,災禍が忘れぬうちにやつてくるということになると,これはもう人間の性向を越えた宿命的な問題であろうか.名古屋地区を襲つた台風15号の痛ましい惨害のごときが,それであろうか.
台風は毎年やつてくる.しかも同時期に何度もやつてくる.そのことはよくわかつている.今年の台風15号ではたまたま名古屋地区が大被害を受けたがその前には,信州,甲州地区が大きな被害を受けている.明年もまたどこかにやつてくる.今度は東京地方が大被害を受けるかもしれない.台風情報の前に一喜一憂の状態が起こる.台風シーズンには毎年,毎回起こる現象である.
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