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VE(分時換気量)-Vco2(二酸化炭素排泄量)slopeは,呼気ガス分析を併用した運動負荷試験で得られる指標の一つで,非常に有用な情報を提供する.負荷方法に関係なく,縦軸にVEを,横軸にVco2をプロットして直線回帰した傾きとして得られる(図1).RC点〔respiratory compensation point;最大酸素消費量(Vo2)の90%前後の負荷量で,換気刺激がCO2のみである最終点〕までは動脈血CO2分圧(PaCO2)は一定に保たれるが,これは運動により発生したCO2を過不足なく排除するようにVEが増加するためである.したがって,RC点まではVE-Vco2関係は良好な直線相関関係が得られ,実際,直線相関係数は平均して0.95前後である.RC点以降では血液のacidosisに頸動脈体が反応してVEは更に増加し,PaCO2は低下する.VE-Vco2 slopeは算出も容易で,計測のためには最大負荷は不要で,再現性も良好である1).簡便に得られるが正確な指標といえる.
Vco2は運動量を反映し,VE-Vco2 slopeが急峻であるとは一定の運動量に対して換気量が多いことを意味する.心疾患患者の呼吸困難の原因には,左房圧が上昇して肺うっ血が増強し呼吸仕事量が増加するなどの呼吸器疾患と同様の機序によるものがある2).一方,肺高血圧症では肺うっ血はないが著明な呼吸困難を認め,肺血流の減少により換気量が増加し(換気亢進hyperpnea),換気量の増加を呼吸困難と感じていると考えられる3).肺高血圧症以外の心疾患でも後者の機序が呼吸困難の原因となっており4),VE-Vco2 slopeは心疾患の呼吸困難の程度を表す指標といえる.
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