Japanese
English
特集 虚血再灌流と臓器障害
血管再疎通とno reflow—心筋の場合
Coronary Reperfusion and No Reflow
金塚 完
1
Hiroshi Kanatsuka
1
1東北大学医学部附属病院総合診療部
1Department of Comprehensive Medicine, Tohoku University School of Medicine
pp.5-11
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902219
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歴史的背景
1970年代に急性心筋梗塞の治療に緊急の冠動脈バイパス術が導入されたが,術後死亡した患者の心筋に広汎な出血性梗塞が認められたことから,冠動脈の再疎通に伴う功罪が臨床的に注目されることとなった1).これより先1960〜1970年代初頭には,実験動物で一過性の虚血後には,血流を再開しても局所的に血流が再開されない領域の生ずることが脳2),心臓3),腎臓4)観察され,no reflow現象として病態が検討されている5).1970年代後半には,Rentropeらにより急性心筋梗塞の治療に冠動脈血栓溶解療法が導入され,その効果を解明するうえで虚血・再灌流の病態解析は重要なテーマとなった.これらを背景に,その後,虚血・再灌流の病態解明に向けた多くの研究がなされ,再灌流障害はCa2+過負荷,活性酸素種の産生,白血球・血小板の活性化などが相互に影響しながら引き起こす,心筋と血管の複雑な障害であることが明らかにされてきた.さらに,近年の核医学,超音波診断学などの進歩は,再灌流障害,特にno reflow現象を臨床的に診断・解析する手段を提供し,PTCAの普及は,各種薬剤の併用投与により,人における再灌流障害の機序を解明する有効な手段となりつつある6,7).
本稿では,no reflow現象に重点を置きながら,心臓における再灌流障害を概説する.
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