巻頭言
古くて新しい治療法?
福田 健
1
1獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科
pp.971
発行日 2000年10月15日
Published Date 2000/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902166
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喘息の治療法のなかには“非特異的変調療法”と呼ばれる一群の治療法がある.喘息治療ガイドラインに沿った治療が普及するにつれて,これらの治療法の大部分は姿を消しつつあるが,以前は,ブロンカスマ・ベルナ皮下注法やパスパート経皮接種法などの細菌ワクチン療法がよく行われていた.ブロンカスマ・ベルナは気道感染を起こす頻度の高い細菌10種類の混合ワクチンで,低濃度・少量から始めて濃度・量を増やしながら週1〜2回皮下注する.パスパートはこれらの細菌の滅菌自己融解物とツベルクリンの混合エキスでこれを週1〜2回経皮接種するものであった.これらの治療法の有効性は二重盲検法で実証されていたが,その作用機序は必ずしも明らかでなかった.感染型喘息では細菌の成分がアレルゲンになっている可能性があるので,これはその特異的減感作療法であるという説,一部の細菌内毒素が視床下部—下垂体—副腎系を刺激して副腎皮質ホルモンを分泌させるという説などが提唱されたが,すべての研究者を納得させうるものではなかった.1980年代に入ると医学の世界でも情報化時代にはいり,確固たるエビデンスのない治療法や合理的な説明がつかない治療法は廃れていった.
それから20年,細菌,結核感染と喘息の関係がにわかに脚光を浴びてきた.今度は分子レベルで説明できるメカニズムで.
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