連載 この病気,何でしょう? 知っておくべき感染症・Vol.19
“古くて新しい病気” トキソカラ症
-――温故知新――
吉川 正英
1
,
王寺 幸輝
1
Masahide YOSHIKAWA
1
,
Yukiteru OUJI
1
1奈良県立医科大学病原体・感染防御医学
キーワード:
幼虫移行症
,
イヌ回虫
,
ネコ回虫
,
食物媒介性寄生虫症
Keyword:
幼虫移行症
,
イヌ回虫
,
ネコ回虫
,
食物媒介性寄生虫症
pp.1137-1143
発行日 2021年9月25日
Published Date 2021/9/25
DOI https://doi.org/10.32118/ayu278131137
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Summary
トキソカラ症は,イヌ回虫Toxocara(T.)canisおよびネコ回虫T. catiの幼虫による幼虫移行症(larva migrans)である.この疾患概念は,1950年代に米国のBeaver博士により確立された.すなわち,肝脾腫,慢性好酸球増加症,肺病変などに特徴づけられる原因不明の小児の病態を,イヌあるいはネコ回虫の幼虫包蔵卵を誤って経口摂取することより生じる内臓幼虫移行症(VLM)であることを解明したのである.わが国では,成人にも多くみられ,感染様式はむしろ待機宿主であるウシやトリの生レバーや生肉摂取によることが多い.眼球や中枢神経への移行もあり留意する必要がある.診断は,イヌやネコの飼育歴,トリやウシなどの生肉,生レバーの摂取歴,CTやMRなどの画像所見,好酸球増加や幼虫の排泄分泌抗原を用いた免疫学的検査などの成績を総合して診断する.
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