今月の主題 結核菌と非定型抗酸菌をめぐって
巻頭言
結核:古くて新しい疾患
島尾 忠男
1
Tadao SHIMAO
1
1結核予防会結核研究所
pp.393-394
発行日 1990年4月15日
Published Date 1990/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900097
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石器時代の人骨の化石に骨結核と考えられる病変があり,エジプトのミイラに脊椎カリエスが発見されていることを考えると,結核は人類をもっとも古くから悩ました疾患の一つと思われる.欧米諸国では社会の近代化,工業化とともに結核が強く蔓延し始めたが,18~19世紀に蔓延の頂点に達した後は,結核対策もなかったのに結核は減少し始めた.生活水準の向上によって,感染,発病が少なくなったためと考えられている.
コッホが結核菌を発見したのは1882年で,これを契機として結核を予防し,診断する技術が次々と開発された.もっとも遅れていた抗結核薬も,1944年にストレプトマイシンが発見されると,新薬の開発が続いた.これらの新しい技術を応用することによって,1945年以降結核は急速に減少した,日本も第二次大戦以降は欧米諸国と同じ早さで結核を減らすのに成功したが,近代的な対策を始めた時点での蔓延状況の差が縮まらず,結核既感染者の多い世代に20歳以上の開きがみられている.
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