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はじめに
高度心筋障害を伴った難治性心不全においては,心臓ポンプ機能の機械的な補助あるいは代行が必要と考えられる症例があり,現在心臓移植がこのような症例に対する最も有効な治療手段と考えられる。しかし,心臓移植を行うには適当なドナー心が必要であり,その施行数が限られている.また,免疫抑制療法を必要とするため,臓器障害や感染症などの合併症を伴った症例への適応が困難である.この生物学的な臓器置換システムに対し,機械的な臓器置換システムとして,人工心臓の開発が進められてきた.
この人工心臓には,自然心臓を温存する補助人工心臓(ventricular assist system:VAS)と,自然心臓を摘出し機械的心臓を埋め込む全置換型人工心臓(total artificial heart:TAH)がある.人工心臓の開発は,まず1957年にTAHの動物実験が行われ,その翌年VASの実験が行われた.DeBakeyにより空気圧駆動ダイアフラム型VASの臨床応用がなされ,さらにCooleyらは1969年にTAHを,1978年には左心VAS(LVAS)を心臓移植へのつなぎ(ブリッジ)として臨床応用を行った.1970年後半からは開心術後などの急性重症心不全に対しVASの臨床応用が積極的に行われるようになった.また,心臓移植の施行数が急激に増加した1980年代後半からは心臓移植へのブリッジとして人工心臓が用いられ,当初はTAHが主体であったが,1990年代になってからはVASが主に用いられている.最近では,ポータブル型(携帯型)VASが積極的に用いられるようになってきた.
本稿では,現在臨床応用されているポータブル型VASを中心にポータブル型人工心臓の現状と問題点を述べる.
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