Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
心不全治療としてACE阻害薬,β遮断薬などの薬物治療に加え再同期療法なども行われるようになったが,心筋障害が高度な症例においては,心臓ポンプ機能の代行あるいは置換法である人工心臓や心臓移植が必要となる.人工心臓には自己心を切除する全置換型人工心臓(total artificial heart;TAH)と,自己心近傍に血液ポンプを設置し自己心臓を温存する補助人工心臓(ventricular assist system;VAS)があり,後者では血液ポンプを体外に設置するタイプと,体内に埋込むタイプがある.
人工心臓の開発研究は,1957年に実験動物の循環をTAHで代行してから積極的に進められるようになった.臨床応用は,VASが1960年代初頭に心臓手術後の重症心不全例に対し行われ,1975年には腹腔内埋込み型LVASが心臓移植へのブリッジとして用いられ,1979年には現在も用いられている体外設置型のPierce-Donachy型(Thoratec社製)が使用された.1980年代半ばには,体内埋込み型左心補助人工心臓(LVAS)のNovacorおよびHeartMate-IPが心臓移植へのブリッジとして臨床応用が開始され,1990年代初頭にはそれぞれ携帯型のHeartMate-VEおよびNovacorの臨床応用が開始され,現在,無拍動流型の臨床応用も開始されている.
TAHは1969年代に心臓移植へのブリッジとして用いられ,1982年より空気圧駆動方式のJarvik型が心臓移植の適応とならない重症心不全患者に永久使用を目的として適応された.しかし,血栓塞栓症など長期補助に問題があるとされ永久使用としては中止されたが,1980年代半ばからは心臓移植へのブリッジとして用いられるようになり,現在も少数例に用いられている.
本稿では,世界的に広く用いられている補助人工心臓について,わが国での臨床応用の現状と今後の展望に関して述べる.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.