Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
虚血性心疾患における血行再建術には,大きく分けて内科的治療である経皮的冠動脈形成術(PTCA)と,外科的治療である冠動脈バイパス手術(CABG)の二者の選択がある.しかし,両者とも医療技術と経験の進歩により適応が拡大しているのが現状で,選択基準の判断もその部分に委ねられる場合が多いといっても過言でない.特に経皮的冠動脈形成術の分野において,ここ数年における技術の進歩と器具の改良,またnew device(ステント,アテレクトミー)の出現により,従来不可能とされてきた複雑病変に対してもさまざまな治療法を駆使することにより,良い成果をあげられるようになってきた.外科領域においても,大動脈遮断をせずに(心拍動下に)バイパスを施行するMIDCAB(Minimally Invasive DirectCABG)法など,経験,技術の進歩により高齢者を含め,適応が拡大されてきているのが現状である.予後を左右する術者の技術は,その施設のcapacityを包括して考慮されなくてはならない.また,初期成功率に基づいて公表されている適応,禁忌のガイドラインも十分考慮しなくてはならない.近年,内科的治療の進歩が著しく,従来ではCABGの適応と考えられる症例に対しても,内科的治療で十分な結果が得られるようになってきている.結果,CABGを選択される病変は必然的に重症複雑病変に偏ることがある.また反面,どちらの治療法でも適応となる病変に対しCABGを優先する施設もあり,同施設内におけるPTCAとCABGの初期成功率,遠隔期予後の比較はバイアスが生じ,難しい.
最適な治療法を決定する際には当然ながら科学的根拠が必要である.しかし,冠動脈疾患の治療法に関する大規模比較試験はわが国ではいまだ十分に行われておらず,欧米での大規模試験に科学的根拠を求めなければならないのが現状である.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.