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特集 冠動脈血行再建術に関するcontroversy
PTCA対CABG:どちらをいつ選択するか
Angioplasty vs Bypass Surgery, which should be chosen?
齋藤 滋
1
Shigeru Saito
1
1湘南鎌倉総合病院循環器科
1Department of Cardiology, Shonan Kamakura General Hospital
pp.955-960
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901770
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はじめに
Andreas Gruentzigによって,1977年に最初の経皮的冠動脈形成術(PTCA)が行われた10年以上前から,冠動脈バイパス手術(CABG)は虚血性心疾患の侵襲的治療法として確立されていた.特に内胸動脈をグラフトとして用いたCABGの長期成績は,大伏在静脈をグラフトとして用いたものに比べてはるかに良好である1).この既に確立している治療法に対して挑むかのように,PTCAの適用範囲は急速に拡大してきた.PTCAはその初期の適応である,主要冠動脈一枝の近位部限局性病変に対する治療法から,多枝病変も治療対象に含めるようになってきた.
一人の患者を目の前にして,循環器(特に虚血性心疾患の)専門医として最適の治療法を選択する時には,合理的な基準が必要である.従来,一枝病変を有する安定型狭心症に対する内科的治療法はCABGに比しても,非常に有効とされてきた.この内科的治療法との比較研究の結果,PTCAは一枝病変を有する安定型狭心症患者に対しては,速やかに,そしてより完壁に症状を改善させる有効な治療法とされている2).一方,多枝病変に対しては内科的治療法よりもCABGのほうが良い長期予後を有するとされてきた.PTCAが多枝病変に対して,CABGと比較して有効な治療法であるか否かは,解決されねばならぬ大きな課題である.完全な外科的治療法であるCABGと,比較的低侵襲な治療法であるPTCAを徹底的に比較検討することは,ほとんど不可能に近い.しかし,われわれは先人の行ったこれらの研究より,多くを学び,そして個々の医師として患者に責任を持って治療法を選択せねばならない.
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