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喘息治療ガイドライン
喘息治療のガイドラインには本邦で広く知られまた利用されているものを挙げると,1992年のInternational Consensus Report on diagnosisand treatment of asthma1),1993年の日本アレルギー学会のアレルギー疾患治療ガイドライン2),1995年のWHOとNHLBI(NationalHeart, Lung and Blood Institute)のGlobalInitiative for Asthma(GINA)3),1997年のNIH, NHLBIのGuideline for the Diagnosisand Management of Asthma, Second Expertpanel on the management of asthma4),そして1998年の厚生省研究班での喘息予防・管理ガイドライン5)などがある.
これらのガイドラインは目的,年度,国または組織によって差異はあるが基本概念は共通している.第一に,喘息は気道の慢性炎症性疾患であるとの認識である.気道の炎症は好酸球,T細胞,肥満細胞などの喘息に特異的な炎症細胞の浸潤と気道の損傷を伴っている.このような気道炎症は気道過敏性を伴い,種々の刺激によって容易に気道の閉塞を惹起する.
第二に,よって,喘息の治療の基本は気道炎症を惹起する因子の解明,除去回避である.アトピーなどのリスク因子の高いものではこれらの気道炎症惹起因子の回避は発病を減少できる可能性があり,少なくとも気道炎症の回避ないし抑制で喘息の増悪を抑制ないし低下させることができる.
第三は,喘息の重症度の判定は呼吸困難,喘鳴の強さや頻度などの自覚症状のみでなく,喘息の病態が気道の閉塞である点から,PEF(ピークフロー),FEVL1.0などの肺機能の測定による客観的な指標も用いて行う必要がある.
第四には,喘息の薬物治療は気管支拡張薬のみによるのではなく,喘息病態の基本である気道炎症を抑制できる抗炎症薬,少なくとも抗炎症作用をもつ薬剤を第一に考える必要がある.抗炎症薬のなかで吸入ステロイドはその的確な抗喘息作用と低い副作用で成人喘息の治療で最も重要である.
第五は,最近のガイドラインでの気道のリモデリングの重視で,慢性炎症の存在は気道壁の少なくとも部分的に非可逆的な気道上皮下基底膜の肥厚,気管支平滑筋の増殖と肥大であり,非可逆的な気道狭窄の原因となり,気道過敏性を亢進させるからである.
本稿では本邦のガイドラインと,このガイドラインでの吸入療法について示す.
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