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はじめに
気管支喘息の病態は①気道の過敏性,②気道閉塞の可逆性,③好酸球を中心とした気道の炎症と定義され,1995年に発表されたWHOによる喘息治療ガイドライン“Global Initiative forAsthma1)”では“喘息は慢性の炎症性気道傷害で,多くの細胞,特に肥満細胞,好酸球およびTリンパ球などが関与している.素因を有する患者ではこの炎症により繰り返し起こる喘鳴,息切れ,胸苦しさ,咳の発作が特に夜間あるいは早朝に繰り返し起こる.これらの症状に伴って,通常,広範であるが変動する気流制限がみられ,これは自然にあるいは何らかの治療により少なくとも部分的には可逆的である.気道の炎症は,また,種々の刺激に対する気道過敏性の原因ともなる.”と定義されている.また,日本アレルギー学会の「アレルギー疾患ガイドライン・成人喘息の診断と治療」(JGL)2)でも,“気管支喘息は広範かつ種々の程度の気道閉塞と気道の炎症により特徴づけられる”とされている.治療ではJGLの“慢性喘息の管理”においても早期のStep 1の段階からβ2刺激薬の吸入,吸入ステロイドの使用を勧めている.さらにStep 2以上でも吸入ステロイド薬の増量など吸入薬の重要性が含まれている.このように吸入薬が成人喘息治療の中心的役割を果たしているが,長期間にわたる症状の良好なコントロールを得るためには,正しい吸入療法を継続的に実施する必要がある.正しく吸入を行うことによって薬剤のもつ本来の効果を十分に発揮し,吸入薬が口腔内に残存するために起こる副作用を減少させることが可能である.
現在行われている吸入療法では定量噴霧式吸入器(meter dose inhaler:IMDI)とネブライザーが用いられている.MDIを使用する吸入薬剤としてはβ2刺激薬,抗コリン薬,吸入ステロイド薬,Disodium cromoglycate(DSCG)がある.従来のMDIの多くがフロンガスを用いているが,フロンの産業利用の全廃に伴い,医療用使用は当面猶予されるとしても代替フロン,あるいはドライバウダーによる吸入に変更されるものと思われる.
以下にネブライザー,MDI,ドライパウダー吸入の実際と吸入を実施するにあたっての注意点について解説する.
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