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はじめに
重症心不全患者に対して,心臓の働きを補助あるいは肩代わりする人工臓器を開発する努力は1960年代から行われてきており,現在様々な方法が用いられるようになっている.心臓の肩代わりをするような人工心臓を外科的に埋め込むことは大きな侵襲を伴うので,より簡便に不全心を補助する方法としてカウンターパルセイションの概念を応用した大動脈バルーンパンピング法(Intra—aortic balloon pumping;IABP)が開発され,現在も広く用いられている.カウンターパルセイションとは心臓の拡張期に血管内の血液を末梢においやることによって冠血流量を増加させるとともに,収縮期の後負荷を軽減させようとする方法であり,大動脈内バルーンパンピング法とは大動脈内にバルーンカテーテルを留置し,これを心収縮に同期させて拡張収縮させることによりカウンターパルセイションを行うものである.これは通常,大腿動脈を穿刺することによってカテーテルを留置することが可能であり,簡便かつ有効な方法であるものの,流量による補助ではなく圧による補助のみであるので,その補助効果には限界がある.より高度の心不全に陥った患者に対しては実際に心臓の働きを肩代わりするポンプが必要となる.このための簡便な方法として,血液損傷の比較的少ない遠心ポンプを応用した経皮的心肺補助法(Percutaneous cardiopulmonary bypasssystem;PCPS)が開発された.PCPSは大腿静脈より脱血,酸素化血液を大腿動脈に返血することにより右室左室両心の補助を行うものである.このPCPSは,その簡便さ,および強力な心肺補助能力から心臓外科,内科,救急医療領域の各種重症心不全に広く臨床使用されるようになり,本邦においても1990年にPCPS研究会が発足しPCPSの適応,成績,問題点などの議論がなされている4).
本稿では,PCPS研究会による全国アンケート調査4)を中心にPCPS使用の現況および成績を述べる.
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