Topics Respiration & Circulation
気道のリモデリングに与る好酸球の役割
相沢 久道
1
1九州大学医学部附属胸部疾患研究施設
pp.209-210
発行日 1998年2月15日
Published Date 1998/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901649
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■最近の動向 リモデリングは炎症による組織傷害の治癒過程において,異常な修復が起こり組織が正常とは異なる変化を示すことである.気管支喘息では気道炎症が持続すると,炎症細胞の浸潤,血管新生,分泌腺や平滑筋の肥厚,基底膜下へのコラーゲン沈着などの結果,気道壁の肥厚が起こる.気道のリモデリングが生ずると,同程度の気道平滑筋収縮でもより大きな内腔の狭窄が起こる.また,気道周囲の肺胞の弾性収縮力による牽引力の伝播の低下のために気道の開通性は低下する.これらの力学的変化のために気道過敏性の亢進と非可逆性の気道狭窄が進行することが指摘されている.
このような気道のリモデリングが生ずる機序は完全には解明されていないが,気道の炎症によるTGF-β1やPDGFなどのサイトカインやmatrix metalloproteinase−9なビのプロテアーゼの関与が報告されている.臨床的に気道のリモデリングを捉えるには気道生検が最も確実な方法であるが,侵襲的であるためルーチンには難しい.最近ではCTも試みられているが,現状では10mm前後の気道壁の解析しか行えない.また,治療および予後とリモデリングの関係では,TDI職業性喘息の患者で原因物質の除去や吸入ステロイドにより基底膜の肥厚が減少することが報告されている.これらの成績に基づくと,喘息患者の非可逆性の気道狭窄の進行を防ぐには十分な抗炎症治療が必要であると考えられるが,どの程度の患者にどのくらいの治療をすればよいかは今後の課題である.本稿では,これらの問題に対し最近の文献から発症機序と治療に関して参考になると思われるものを紹介する.
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