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細胞が組織を構成しているとき,細胞同士が結合して構造を作り,その細胞の集合体の周囲には細胞外マトリックスが存在する。細胞外マトリックスの主な構成要素である膠原線維と弾性線維は組織構造を支える骨格であり,この間にはさらにフィブロネクチン,ラミニンなどの糖タンパク,プロテオグリカン類,ヒアルロン酸など多くの分子が存在し,組織構造を維持するために多彩な役割を担っている。組織リモデリングは炎症,腫瘍,再生,創傷治癒などで生じ,その場の細胞の構成と配置を変化させていく一連の過程である。この過程には,細胞外マトリックスも構成と配置を変化させ,時には線維化などの病変が引き起こされる。リモデリングでは,細胞は静的な既存の細胞外マトリックス構造から離脱し自由に移動する必要があり,マトリックスも動的な変化を受ける。
このような動的な場を作り出す物質として,リモデリングの初期から最盛期の組織で細胞間に一過性に高発現するタンパクを,matricellular proteinとしてまとめる考え方が近年提唱されている1)。これには,オステオポンチン,テネイシン(TN),トロンポスポンディンなどの細胞外マトリックス糖タンパクが含まれている。これらのタンパクはいずれも発生期では高発現しているが,成体の正常組織での発現は極めて限定的で,線維や基底膜といった構造物を形成せず,細胞と基質間の結合を動的な状態に変化させ,多彩な生物活性により細胞と細胞外の物質との相互作用を修飾することを特徴としている。これらのタンパクの遺伝子欠失(KO)マウスは,不思議なことに一見正常に出生してくることも特徴のひとつにあげられている。
この総説では,matricellular proteinの代表的なタンパクのひとつであるTNについて,構造と機能,組織リモデリングでの役割などを述べ,病態診断への応用についても紹介したい。
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